もうかれこれ10年程前、京都伏見の蔵元・山本本家の直売所に生酒を物色しに行ったときのこと、たまたま蔵元の奥さんがお店に出ておられた。世間話していると、山本本家の看板ブランド『神聖』のラベルに冠している毛筆文字は、富岡鐵斎翁が揮毫されたものだと仰った。
富岡鐵斎といえば、幕末の京都に生まれ、明治・大正の激動期に活躍した日本最後の文人画家と謳われた人物だ。およそ七十年にわたる画業の中で万余の作品を残したという、そのエネルギーたるや、日本近代の巨星といわれる所以である。
鐵斎美術館|聖光殿|清荒神清澄寺(きよしこうじんせいちょうじ)
丁度、時を同じくして、私は兵庫県宝塚市に所在する清荒神清澄寺(きよしこうじんせいちょうじ)の広大な境内にある私設ミュージアム『鐵斎美術館|聖光殿』を拝観したばかりだった。『富士山図』などの豪放磊落(ごうほうらいらく)な作品群を目の当たりにしていたので、それもあって「富岡鐵斎ってあの」と少しいきさつを尋ねてみた。
『神聖』の毛筆文字は山本本家の先々代が御結婚なさるときに揮毫いただいたもので、そのまま使わせてもらっていると仰っていたと思う。富岡鐵斎翁が京都人であるということも、この時はじめて知った。
京都国立近代美術館|没後100年 富岡鐵斎
富岡鐵斎はもともと京都の商家(法衣商)の出自だそうだ。京都に百年会という商家のサロンがあって、加盟しているのはどこも百年以上続いている老舗ばかりで所縁が深く、富岡鐵斎の書画はたいていの家に所蔵されているそうだ。
奇しくも今年2024年4月から5月にかけて、京都国立近代美術館にて没後100年・富岡鐵斎という大回顧展が催される。京都での大規模な展覧会は27年振りで、近年になって新たに見出された作品や富岡鐵斎が愛用した彩色具・文房具なども展示されるそうだ。
富岡鐵斎 富士遠望 寒霞渓図 (左隻) 1905年 京都国立近代美術館蔵
2016年 生誕180年記念 富岡鉄斎-近代への架け橋-展 兵庫県立美術館
若い頃、神官を務めたこともあるという富岡鐵斎翁に縁ある『神聖』からのメッセージのおかげで、良いことに気がついた。
これは本当に楽しみな展覧会だ。
(つづく)
身近な自然から気づいた事
山本本家『神聖』の毛筆文字は、富岡鐵斎翁が揮毫されたものだと伺った。
今年2024年4月から5月にかけて、京都国立近代美術館にて没後100年・富岡鐵斎という大回顧展が催される。
『神聖』のおかげで、良いことに気がついた。
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