オナガサナエがやって来て傍らに止まった。

田舎の家の裏庭で夕方、ノコギリ鎌を使って手刈りで草取りをしていると、美しいトンボがやって来てすぐ傍らの朽ちた竹の棒の先にじっと止まった。

ムギワラトンボやシオカラトンボたちは人懐っこく、外に出ると必ず傍にやってくるが、何かいつものトンボたちと全然違う。すごく色あざやかで容姿が美しいのだ。

日本固有種のトンボ|オナガサナエ

オニヤンマに体色はよく似ているが、体長が5、6㎝ほどで少し小さく、大きさが1.5倍も違う。そう言えば以前、家の周囲をパトロールしているのを見かけたことがある。


後で写真を解析して、詳しく調べてみると、本州・四国・九州や鹿児島県種子島などに広く分布する日本固有種のトンボ、オナガサナエだとわかった。近畿では7月下旬頃から8月のお盆シーズンによく見られるそうだが、生息域は徐々に減少傾向にあるようだ。

オナガサナエ Melligomphus viridicostus (Oguma, 1926)

<分類学的位置>
トンボ目 Order Odonata 
サナエトンボ科 Family Gomphidae 
オナガサナエ属 Genus Melligomphus

出典 : デジタルトンボ図鑑ーオナガサナエ  

勝手生えの鶴首かぼちゃ

勝手生えの鶴首かぼちゃの葉っぱ。

昨秋、奈良の天河方面へ出かけた折に、黒滝村の道の駅で休息をとった。産直市場で目に留まった無農薬野菜の品々を購入したが、長持ちする鶴首かぼちゃだけはそのまんま置きっぱなしになっていた。


そのうちに皮がボロボロに剥けて、本体も柔らかくなり微発酵し始めた。これはいけないと思い、中身を割って種子を出し、畑の傍にそのままバラ蒔いておいた。何ともいい加減な種子の蒔き方だが、そのうちの一部が今夏すぐに芽を出した。


自然農のやり方で、鶴首かぼちゃの葉っぱ周辺の草を刈って敷き藁にした。そのような作業をしていると、オナガサナエが手伝いにやって来たのだ。

オナガサナエの雄は、尾部付属器が特徴的

尾部付属器が特徴的なオナガサナエの雄。

オナガサナエはとにかく色が極彩色で綺麗だ。私のもとに飛来した個体はおそらく雄で、尾っぽの付属器が膨れていて特徴的だった。ほぼ雄に間違いないと推察できるが、先っちょがハサミを閉じたような形状をしていた。


そしてオナガサナエは空中で交尾して8月上旬頃、生息域の比較的流れが大きな河川の中流域で、赤い卵をホバリングしながら産み付けるそうだ。

緑色の美しい眼鏡、オニヤンマとの違い

オナガサナエは,左右の複眼眼鏡が分かれている。

オナガサナエがオニヤンマと大きく違うところは、綺麗なエメラルドグリーンの複眼眼鏡が左右に分かれているところと、枝や石の上に水平にとまるところ。オニヤンマ科のトンボは、左右の複眼が接しており、真っ直ぐな枝にぶら下がるようにして留まる事が多いらしい。


うーんと近づいても全く逃げない。時々小首をかしげたりしながら、じーっとこちらを見守っている。


泰然自若、不動心、なんか大人。


まるで山の『精霊』か『妖精』が宿っているかのようだ。

オナガサナエと一緒に座り、瞑想した

オナガサナエとしばらくの間一緒に座り、沈黙をわかち合った。

もともと警戒心が薄く、かなり至近距離まで近づいても逃げないことが多い種だそうだが、それにしてもずっと傍らについたまま離れない。

そうか、ただ一緒に居たかっただけなのだなと気づき、草取りの手を止め、私も腰をかけた。

しばらく静かな時間をわかち合うことにした。


目を閉じて沈黙に入り、瞑想した。


時間も空間も無い、自然体で心地良い安らぎと静寂だけが流れた。


。。。。。。。

はっと目が覚め、ふと腕時計を見ると20分が経過していた。

オナガサナエはまだ傍らに居て、小首をかしげている。

彼は沈黙をリードしにやって来たのだ。


ありがとう、と穏やかに声を掛けると、


気がすんだのか、サッと飛び去った。


身近な自然から気づいた事

オナガサナエとの出会い

うーんと近づいても全く逃げない。時々小首をかしげたりしながら、じーっとこちらを見守っている。泰然自若、不動心、なんか大人。

まるで山の『精霊』か『妖精』が宿っているかのようだ。

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